浅野史郎研究
 
Special Topic 
 

2007.03.31 vol.11 「女性勝手連」を傍聴して
  3月30日夕方5時30分、新宿駅西口で都知事選候補者の浅野史郎氏を応援する「女性勝手連」の演説会が行なわれた。
  選挙カー上でマイクを持ったのは、漫画家の石坂啓氏、阿部知子代議士、樋口恵子氏、細川護煕・菅直人・鳩山由紀夫三氏の夫人など。いずれも著名人であり、浅野氏の支持者には女性が多いことから、この面々がどういう話をして引きつけるのか、興味が持たれた。集まった報道陣約30人、浅野陣営の応援者約30人、聴衆約60人も恐らく同じ思いではなかったろうか。
  だが、聞いているうちにがっかりというか、ウンザリしてきた。「都知事が石原さんでいいのか」「石原さんは差別的な発言が多い」「74歳の石原さんに(都知事としての)定年を与えよう」など、浅野氏を応援するというよりも、最初から最後まで「石原批判」のオンパレードなのだ。「選挙はマイクで相手方を批判しても名誉毀損にならない」とは政治関係者の弁であり、もちろん批判することも選挙手法の一つだろうが、そればっかりでは聴いていて気分のいいものではない(もちろん、小誌は石原支持者ではないし、何より選挙権がない)。
  同じ批判するなら、「石原都知事の何がダメで、それに対して浅野氏はこうしようとしている」というような、浅野氏の政策・ビジョンを伝えてほしかった。強風の中で立ち止まって聴いていた人たちも、それを期待していたのではなかったろうか。「石原さんをこきおろしてばかりね」とは小誌が聞いた中年女性の感想である。
  この女史たちのスピーチの中で、一つの誤りと一つの「発見」があった。
  誤りは「浅野さんは宮城県で福祉日本一と情報公開日本一を成し遂げた人です」という部分。福祉は日本一にはなっていない。むしろ全国でも下位にランクしている。情報公開日本一はたまたまオンブズマンのランキングでそうなっているだけで、質的には全面公開されていない。
  「発見」は「2期やってやれないことは、3期やってもできない」と述べたこと。これは当然石原氏に向けた言葉だが、なるほど宮城県知事時代の浅野氏にも同じことが言えるな、と思い知らされた。同時に「(県知事を)3期やってできなかったことを、都知事としてできるだろうか」という疑問を、はしなくも抱かさせてくれたように思われる。
 
  女性たちがマイク片手に感情的な演説を声高に行なう。浅野氏は「女性のパワーはすごい。女性は強い」と言っていたが、なるほどその通りだった。但し、お世辞にも「品がある」ようには見えなかったことが惜しまれる。
 

2007.03.29 vol.10 「福祉公約」への質問

 都知事選に際し、浅野史郎氏はそのマニフェストの中で「私であるからこそできること」と題して福祉政策をトップに掲げている。拝読して不明な点や具体的にどのように進めていくのかわからないことなどがあるので、以下に質問させていただく。

[公約@]
「老いても安心して暮らし続けられる東京〜私の本籍地は福祉です」
[質問]
  平成17年11月に宮城県知事を退任する際、浅野氏は「福祉は私のライフワーク」「私の本籍地は福祉です」「知事は卒業した」と述べ、知事時代から兼務していた宮城県社会福祉協議会会長職を引き続き務める決意を明らかにしました。これに対して浅野氏を支持していた人たちや福祉関係者から歓迎と期待の声が高まりました。
  それからわずか1年4カ月で、今度は都知事選に出馬です。この突然の方向転換に宮城県民は驚いていますが、特に浅野氏を支持・期待していた福祉関係者から「福祉はライフワークというのウソだったのか」「裏切られた思いだ」「浅野氏が進めてきた県社協の事業を放り投げていくのか」など、失望の声が起こっています。
  こうした意見に対して、浅野さんはどのようにお答えするのか、お聞かせください。

[公約A]
  支援を必要とする高齢者を地域で支えるために、地域の中の資源を思い切って増やします。認知症の高齢者のためのグループホームを倍増します。その際には、高齢者と知的障害者などが一緒に暮らすための「共生型グループホーム」を4年間で200カ所用意します。グループホームの機能にデイサービス、ショートステイ、レスパイト・ケアを組み合わせ、在宅支援サービスの拠点となる多機能型の小規模施設を4年間で300カ所設けます。
[質問]
  東京都は23区と39の市町村があります。そのことからすると、グループホーム200カ所は1地域当たり3カ所、小規模施設300カ所は1地域当たり7カ所ということになります。収容人数がどのくらいなものなのか、浅野さんの公約には具体的数値がないのでわかりかねますが、宮城県で浅野さんが行なったグループホームの規模は1戸当たり4〜5人収容というものでした。仮りに同じ規模程度の施設だとすると、数的に少ないような気がしますが、いかがでしょうか。
  都がこうした施設を設けることは、少なからず民間施設経営者にとって競争相手になります。このへんの同意・了承をどうされるのでしょうか。
  それ以上に問題なのはグループホームの世話人です。世話人はアパートの管理人と違い、介護のノウハウがなくてはしっかりしたお世話ができません。そのため宮城県でも世話人と入所者との間でトラブルがあったり、四六時中見守っていなければならないことから、世話人が疲れてしまったりなどの事例があったことは、浅野さんも県社協会長としてご存知なはずです。こうした現実的な課題にどう対処していくおつもりなのか。お答えしていただければと思います。
  また「高齢者と知的障害者が一緒に暮らす」とあります。知的障害者の障害の度合いにもよるでしょうが、果たして一緒に暮らせるものなのかどうか。事故とかトラブルが起こることはないのでしょうか。

[公約B]
  障害者の就労を進めるために、就労支援策を展開します。まず最初に東京都庁で障害者の雇用を進めます。
[質問]
  障害者の就労支援はその通りだと思います。都庁で雇用を図っていくということですが、どの程度の人員を考えているのですか。
  現在、多くの自治体で障害者の雇用が行なわれてます。ただ現実問題として、正職員としての雇用は無理で、単純作業などのアルバイトやパートが多いようです。浅野さんとしてはどのような仕事を任せるつもりなのかもお聞きしたいものです。
  ちなみに言えば、就労支援策としては小規模作業所などを設置して、障害者の方々に技能の習得と働くことの生き甲斐・意欲をもってもらうことの方が先決だと思いますが、いかがでしょうか。

[公約C]
  東京都外に、東京都出身の知的障害者が主として入所している「都外施設」が全国で40か所以上あります。こういった施設に入所している知的障害者が希望すれば、ふるさと東京に帰れるようにします。
[質問]
  この文言からすると、都外にいる知的障害者を都内の施設に住まわせるようにする、と受け取れます。仮りにそうだとするなら、浅野さんが宮城県知事時代に掲げた「知的障害者施設解体宣言」(知的障害者を施設からグループホームなどの地域に移行する)に矛盾するように思われます。
  施設に住まわせないということならば、受け入れ態勢をどのようにしていくのでしょうか。

[公約D]
  地域の中で高齢者への介護にあたったり、障害者への支援をする人たちの報酬が低いために、意欲と能力がありながら、現場を離れていく介護職員が多くなっています。介護保険の給付の中で、東京都独自に報酬を上乗せすることによって、有能な介護職員を引き止めます。
[質問]
  この公約は問題が多いと思われます。
  第一に、報酬を独自に上乗せするということは、税金を使って職員を支援するということになります。都民の理解をどう得るおつもりでしょうか。
  第二には、東京都が報酬を高くした場合、地方にもその報酬額の影響を及ぼす懸念があります。
  また、少ない可能性かも知れませんが、東京都内で働いた方が高収入を得られるということで、東京都外の首都圏で働いている介護職員がそれまでの勤務地を去ってしまうこともあり得るでしょう。
  第三に、現在、介護・福祉で大きな問題となっているのは「障害者自立支援法」です。ご存知のように、この法律が施行されてから、障害者とその家族は料金が高くなったために利用・サービスを差し控えなくてはならなくなっています。そのため施設経営者は収入が大幅減になり、それが浅野さんが言うところの「介護職員が現場を離れている」最大要因になっています。こうした状況のために、各自治体が支援をしていかざるを得ないというのが現実です。
  言わば、障害者自立支援法は「天下の悪法」とも言うべきものですが、浅野さんは県社協時代「自立支援法を採点するなら75点」と評価しています。つまり、利用者・施設経営者・自治体が困惑している「悪法」を、浅野さんは賛同しているということです。
  そうした世論と反対の考え方の浅野さんが掲げる政策を、どのように進めていかれるつもりなのか。現在の障害者自立支援法についてどうしていくのか。お聞きしたいものです。

[公約E]
  障害者差別撤廃条例を制定します。
[質問]
  この条例については、浅野さんは宮城県知事時代にも制定しようとしました。しかし「宣言しただけで具体的にどうするのか」「実効性があるとは思えない」などの理由から、宮城県では条例化できませんでした。
  浅野さんはこの条例制定で具体的に何をするお考えでしょうか。また、仮りに差別したと見なされた場合、その人は罰則などを受けるのでしょうか。
  「人の心やモラルに関することを条例にすべきではない」との指摘もあります。

[公約F]
  高齢化のために足腰が弱り、若者本位のまちづくりのために外出できない人たちがいます。予防介護の第一歩である「閉じこもり防止」の観点から、高齢者、障害者にも利用しやすいまちづくりを進めます。
[質問]
  浅野さんがここで述べていることは「バリアフリーからユニバーサルデザインへ」ということだと思われます。その点からすると、日本中でユニバーサルデザイン化を先行している自治体は、恐らく東京都がトップではないでしょうか。地方の者からすると、東京は確かに混雑した街ですが、老人や障害者への配慮は格段に進んでいるように思います。
  もちろん、浅野さんは「もっとすべきだ」ということでしょうが、要は財源との兼ね合いだと思うのです。どういうふうに進めていくのか、具体的な数値を示していただければと思います。

[公約G]
  小中学校の普通学級に、障害を持った児童や生徒を受け入れられる統合教育を進めます。重い障害を持っていても、本人の希望により、どこの学校に通うかが決められる体制をつくることが必要です。受け入れられる健常児にとっても、クラスの中で障害を持ったクラスメートと一緒に教育を受けられることは、大きな意義があります。
[質問]
  考え方としてはその通りだと思います。問題はどのように具現化していくかということですが、この公約にはそれが触れられていないので残念です。
  浅野さんの公約を行なうとすると、教員の大幅な増員や施設の増設になるように思われます。何しろ現在の東京都は40人学級制ですが、それでも教員は手一杯状態だと言われています。統合教育をする場合、少人数学級にするなど、それにふさわしい体制を敷く必要があります。果たしてそうした体制を取れるものかどうか。もちろん、教員の資質なども欠かせません。
  浅野さんは決してそうではないと思いますが、教育論者の中には「分離教育はおかしい。統合教育をすることがいいのだ」という短絡的な考え方の人も少なくありません。現在の国際的な流れは、統合教育として一緒にすればいいということではなく、あくまでも教育を受ける権利があり、その中で選択肢を広げていくべきだ、というものです。
  宮城県知事時代、浅野さんはさまざまな政策を掲げましたが、教育ビジョンだけは述べられませんでした。教育体制ということだけでなく、浅野さんの考えている教育とはどのようなものか、お示ししていただければ助かります。

 以上、浅学のゆえに質問が多くなりました。お答えしていただければありがたいのですが、選挙中でご多忙と思われますので、回答するかどうかは浅野さんのご判断にお任せします。
                                                            敬具

 

 
VOL1 責任感について VOL11 「女性勝手連」を傍聴して
VOL2 非常識な人  VOL12 「新人」という意味
VOL3 「改革派知事」の中身 VOL13 お任せ選挙
VOL4 情報公開の実態 vol.14  浅野氏の敗因
VOL5 選挙手法について vol.15  今後の進路
VOL6 福祉について  
VOL7 都政運営の基本姿勢について  
VOL8 選挙の争点について  
VOL9 参謀・田島良昭現る  
VOL10 「福祉公約」への質問  
   

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