2001.10
第1号
8P
 
「魚の町」塩釜市が混迷を深めている。1つは、経営不振の「マリンゲート塩釜」でり、もう1つは「場外馬券売り場の誘致問題」である。いずれも塩釜市の経済を左右する大きな問題だが、塩釜市政は抜本的な対応策を示さず、第三者に任せる態度を決め込んでいる。果たして塩釜市は行政能力を放棄したということなのか−−。
 
 まず最初に「マリンゲート塩釜」(以下「マリンゲート」と略す)からいこう。
 この施設は塩釜市と宮城県が出資したもので、オープンしたのは平成○年のこと。総工費○○億円をかけた3階建ての内部には、展示コーナーやレストランを設置。隣接する塩釜観光の最大のポイントである塩釜港の遊覧客を集客する狙いだった。
 ところが目論見が大きくはずれ「マリンゲート」を経営する第3セクター「塩釜港開発」(社長/阿部久寿・塩釜商工会議所会頭)は現在約7億円もの累積赤字を抱え、経営難に陥っている。
 このため塩釜市と県は再建策を検討。その結果、塩釜市が「マリンゲート」を11億3683万円で買い取ることにし、このうち約6億9000万円を塩釜市が、4億4700万円を県がそれぞれ負担することで合致。塩釜市はこのための補正予算案を市議会に提出した。
 塩釜市ではこの負担分のうちの4億7600万円を庁舎建設基金から繰り入れ、残りの2億1310万円については起債を発行して調達するという。自治体が財政難に苦しんでいるのは塩釜市も同じ。そのため市議会は特別委員会を設置し、この処理について質疑・検討する方針だ。
 議会関係者によれば、「地域産業の振興を考えれば、今回の処置はやむを得ない」と判断しているという。しかし、果たしてそうなのかどうか。もともと「マリンゲート」 の計画については「要はレストランがメイン。さほど集客は見込めない」という意見も少なからずあったことは事実である。しかも「第3セクターという経営能力に欠ける母体で、健全に運営していけるかどうか」との不安視も当初から投げかけられていた。つまりは「計画そのものがあまりにもお粗末としか言いようがないもの」(議会関係者)だったということになろう。
 案の定、そうした予測通りに至ってしまったわけだが、問題は今回の処理の仕方である。経営が破綻すると、公金投入もしくは自治体が買収するという手法は、第3セクターの救済に共通している。この費用は言うまでもなく市民の税金である。
 もちろん、これで「マリンゲート」が再建されるなら問題はないが、恐らく現状では「公金の垂れ流し」が、今後も延々と続くだろう。何故なら塩釜市も県も根本的な対策を打ち出していないからである。民間企業であれば、事業が失敗したのは何故なのか、今後どういう施策を立案・実施すれば再生できるのかということを検討した上で再投資していく。それが当然のことなのである。
 ところが「マリンゲート」をはじめ、ほとんどの第3セクターはそうした経営に対する責任と心構えが露ほどもない。これでは真剣な経営態度とは言えないし、失敗するのは目に見えている。そして、塩釜市と県がこの期に及んでも抜本的な再建策を打ち出さないということは、行政能力がないということに等しい。 このことは「場外馬券売り場(ウインズ)の誘致問題」でも同様のことが言えるだろう。
 ウインズの誘致計画は、施設の老朽化や売上げが減少してきたことから、塩釜水産物仲卸市場(以下「仲卸市場」と記載)が活性化策として打ち出したもの。仲卸市場に隣接する駐車場にウインズを開設し、その来場者を取り込もうという計画である。すでに2年前の平成11年夏に日本中央競馬会(JRA)に誘致申請を行なった。JRAとしても「本来は仙台市にウインズを開設したかったが、仙台はギャンブル施設に反発が強いため、交通アクセスと商圏の大きさから塩釜での設置を望んでいた」(地元関係者)という。
 このためウインズ建設地の地権者でもある仲卸市場は、市場の組合員に誘致の賛否を諮った。また、仲卸市場の周辺の町内会でも同じように町内会員から賛否を問うことになった。ところが、この賛否の問い方が両者とも不思議としか言いようがないものなのである。
 まず、仲卸市場の場合はこうである。当初、組合員に対する誘致計画の説明は「仲卸市場が別法人をつくり、そこを通してJRAに仲卸組合が所有する土地を貸す」というものだった。ところが協同組合法では仲卸市場が別法人をつくることは許されていないことから、代案としてJRAの直営方式にすることをJRAにもちかけた。つまり土地を賃貸するのではなく、売却するということである。
 土地を売るかどうかについて、昨年1月に組合内で採決したところ43対26で売らない者が断然多く、この線でまとまるものと思われた。ところが、その3ヵ月後になぜか再び採決がとられる。このとき組合の理事長は「土地を売ってもいいと言う人は拍手してください」ともちかけ、この拍手で「売ることになりました」と結論づけたという。誰がみても乱暴な決め方としか言えないが、これを組合員の総意」として、JRAへの交渉材料の原点にしているという。 一方、町内会の場合はどうかというと、こちらもいい加減なものとしか言いようがない。
 ウインズの誘致について町内会では同意するかどうかの賛否を問うことになったが、それには町内会員がどれだけ情報を把握しているかが前提になる。ところが「ほとんどの会員はこの計画がどういうものなのか知らされておらず、採決もそうした状況の中で突然行なわれた」(ある会員)という。また、ある町内会では、出席者が3分の1にも満たない中で採決が行なわれたともいう。これでは仲卸市場と同様に「町民の総意」とは言えないはずだが、ここでもこの採決結果が重きをなしている。
 それ以上に不思議なのは、この採決を基にして各町内会長が署名・押印した同意書である。この同意書は仲卸市場理事長とJRA理事長に提出されたもので、文面は以下のようになっている。
 仲卸市場理事長充ての文面は「ウインズ誘致につきましては、仲卸市場の活性化と地域の発展にとって有用であると思われますので、同意いたします」
 JRA理事長充ての文章は「仲卸市場および第4駐車場にウインズが設置されることに同意いたします」
 一見しただけではわからないが、この2つの同意書の意味は明らかに違っているし、矛盾した内容になっている。仲卸市場充てのものは「ウインズが設置されることによって、仲卸市場が活性する」ということである。ところがJRAに充てたものは「仲卸市場と第4駐車場にウインズを設置する」としか解釈できない。一方は仲卸市場を生かしていく。もう一方は立ち退かせる。この相反する内容に同時に町内会長が同意しているというのは、いったいどういうことなのだろう。
 そして、より問題なのはこのウインズの誘致計画について、塩釜市も商工会議所も何ら対応・協議をしていないということである。「魚の町」塩釜にとって、仲卸市場の浮沈・活性は市全体の重要問題である。同じように、ギャンブル施設のウインズが開設されることは、交通渋滞や警備、子供たちへの影響、住民生活への関わりなど、さまざまな問題が生じてくる。実際、塩釜市のウインズ誘致場所は三本木町などの郊外と違い、市内の一画に設けられることになる。周囲には小学校、中学校、病院、保育園があり、住宅地でもある。加えて、塩釜地域は水産物の輸送もあって、交通の往来が非常に激しい。ウインズ開設による影響は計り知れないものがあると言えるのである。
 こうした市民生活、市の重要産業である水産業にとって、ウインズを誘致することが得策なのかどうかを考えるのは、行政でしかあり得ないはずである。ところが塩釜市は何故かこの問題を仲卸市場と町内会に委ね、自らは何もしていない。これでは行政機関としての役割を放棄しているに等しいだろう。
 仮りにこのまま計画が進行し、その結果、仲卸市場が消滅することも考えられなくはないことである。一部の人間だけで決められたこと、それも公平に採択されたものでない結論に、塩釜市の将来を託していいものなのかどうか。「マリンゲート」の二の舞を踏むべきではないと思われるが、如何なものだろうか。
 
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