2001.11
第2号5P
 
 
 
 政府が市町村合併を促進させようとの意向もあって、全国的に合併に向けた取り組みが行なわれている。宮城県内では中新田・小野田・宮崎・色麻の加美郡4町が合併をめざしているが、理想的な形と言われているのが県南の柴田・村田・大河原の3町合併構想だ。新都市誕生の展望と、合併に至るまでの課題を探ってみた。
 
 柴田・村田・大河原の3町合併構想がもち上がったのは、意外に古い。今から10年ほど前に大河原青年会議所が3町による「桜市構想」を掲げたのがきっかけで、この私的研究会に3町のメンバーが参加していたという経緯がある。実際、3町では「3町縦断マラソン大会」を開催するなど、連携した行事も行なってきていた。
 その後、合併話は一時下火になったが、地方分権の流れや広域行政が時代の趨勢になり、さらには政府が市町村合併支援本部を設置し、「合併特例法」を打ち出したこともあって、合併気運が一挙に上昇。合併を推進する住民グループが相次いで組織化された。
 昨年5月に「3町合併推進百人委員会」(太田良平委員長)が設立したのを皮切りに、その2カ月後には各町に「大河原長桜川会」(庄司久治会長)、「明日の柴田をひらく会」(菊地真一会長)、「二十一世紀の村田を考える会」(大沼民夫会長)が設立。今年9月の各町の定例議会に、合併協議会の早期設置を求める請願書をそれぞれ提出した。
 この請願書の概要は、@3町が一体的な地形にあり、歴史的にも相互交流が深い。地域経済・生活圏においてすでに一体化されており、町として実質的に境界が存在していないこと、A3町ではすでに行政区を越えた学校への学童の受け入れ、各種施設の共同利用、広域交通網の整備などに取り組んでいる。また「3町共同推進事業協議会」を設置し、上野山・韮神山の総合整備、県南中核病院(仮称)の建設、新幹線の駅誘致など、共通課題に取り組み、行政の連携が進んでいること、B各自治体の財政が危機的状況にある中で、質の高い行政サービスを提供していくためには、合併によって行財政基盤の強化を図り、自治・行政能力を向上させることが不可欠なこと−−というものである。
 この請願書には3町の議員も同調。村田町では議員定数18人中9名、大河原町では20人中17名が推薦議員として署名した。
柴田町の場合は推薦議員は4名だったが、24人の議員のうち18名が合併推進派と言われる。3町の議員の大半が合併に賛同しているということになろう。
 この請願書の提出を受けた柴田、大河原の町議会は採択することを決定。村田町議会は継続審議をすることになった。
 一方、町民サイドの反応はどうかというと、こちらも関心度は予想以上に高い。このことは平成10年9月に大河原町の桜川会が実施した町民アンケートからも窺われる。このアンケートは530枚配布したものだが、回答が517枚(回収率97・5%)にも及び、これだけも町民が合併を如何に意識しているかという証左と言えるだろう。
 町民がどのような意向を示しているのか。アンケート調査によると、次のような具合である。
 まず「3町合併に関心があるか」という問いには「非常に関心がある」が39・8%、「多少は関心がある」は46・2%、「あまり関心がない」が11・8%、「全く関心がない」のは1・9%となっている。
 次に「3町合併についてどう思うか」に対しては、「賛成」52・9%、「どちらかといえば賛成」が26・0%で、「反対」は5・2%、「どちらかといえば反対」が4・3%、「どちらとも言えない」が11・6%である。
 また「合併を誰が中心になって進めた方がよいと思うかか」という質問には「町民」と答えたのが42・1%あり、「行政と議会が共同で進める」が38・7%、「行政(町長)」は15・4%、「議会(議員)」が6・7%という回答が寄せられている。
 同様に「合併のメリットとして何が考えられるか」との問いかけには、「議員が半分以下になる」が39・2%、「行政の3役が3分の1になる」というのが15・3%、「行政経費が少なくなる」が27・6%で、続いて「行政サービスがよくなる」6・3%、「税金が安くなる」5・7%、「その他」5・3%となっている。
 この回答からしても、合併の賛成者は実に8割弱、つまり10人に8人がイエスと答えており、今後の合併の取り組み方については、町民を中心にし、行政と議会が共同で進めるように促していることがわかるだろう。
 このアンケート調査は大河原町のみで行なわれたものだが、柴田町でも町民の合併気運は盛り上がっているという。
 自治体合併の多くは行政者同士の話し合いだけで進められ、町民に知らされるときは構想がすでに固まり、ほぼ実現の見通しがたった時点というケースが少なくない。そのため町民サイドからすれば、寝耳に水というか、狐につままれたような形で受け止めざるを得ないことになりがちである。この点からしても、この3町の合併構想は住民サイドからのボトムアップ型と言うことができ、住民の盛り上がりといい、理想的な手順を踏んでいると言えるだろう。
 理想的なのはそれだけではない。何よりも合併して誕生する新都市の姿が適切なのである。
 大河原町は人口約2万2千人で、面積が約25平方`。国や県の出先機関が置かれており、東北本線や国道4号線など主要交通網が整備され、商業も集積。仙南地域の交通と、政治・経済の要として位置づけられている。
 村田町は人口約1万3千人で、面積約78平方`。東北自動車道の村田インターチェンジ、山形自動車道の村田ジャンクションが整備されており、多くの企業が集積する工業団地を有している。
 柴田町は人口約3万9千人。面積が約54平方`。東北本線が走り、仙台空港や村田インターチェンジから10数`の距離にある。独自の企業誘致策が奏功し、県内屈指の工業地帯を形成している。
 この3町が合併すれば、面積約157平方`、人口約7万5千人を有する、政治・工業・商業機能と田園地帯を備えた、バランスのよい中核都市が誕生することになる。県内では石巻市に次ぐ3番目の規模になり、県南の中心として位置づけられることは疑い得ない。
 また、合併によって、これまでの脆弱な財政状況から、財政基盤の強化が図られることをはじめ、行政組織の統廃合による効率的な運営など、メリットは充分にある。
 一方には「中心部と周辺部の格差が生じる」など、合併によるデメリットを懸念する向きもあるが、この3町合併に限って言えば、デメリットは皆無と言えそうである。
 その理由としては、合併に前向きな平野博・柴田町長と佐藤卓郎・大河原町長が異口同音に「新都市はクラスター型にしていきたい」と述べていることである。クラスター型とは「ぶどう状」の意味で、一つの房に多くのぶどうの実が連なっているように、新都市を生活圏・商業圏など、それぞれの機能を分担した広域的な街づくりを進めていくことを打ち出したことにほかならない。
 さらに、合併に当たっての基本方針は、住民のサービス向上に努めることが大原則であり、具体的に言えば「住民福祉は高い水準に合わせ、住民負担は低い水準に合わせて調整する」ことが一般的である。このことからしても、合併によって格差が生じることは、ほとんどあり得ないと言えそうである。
 こうしたことから、前出の合併推進百人委員会をはじめ各町の住民グループ組織は、地方自治法に基づく合併(法定)協議会の早期設置を求めている。
 実は、これには大きな理由がある。前述した政府が打ち出した「合併特例法」は時限立法で、平成17年3月までが施行期限となっている。この時期までに合併する自治体には、政府が合併支援措置を図るというものである。各自治体の財政状況が厳しい現在、この「特典」を見逃す手はない。同じ合併するなら、支援措置を受けるうちにした方がいいのは道理。住民の気運も高まっている今こそ、合併を進めるチャンスとの判断は当然だろう。
 この支援措置を受けるためには法定協議会を設置する必要があり、法務省では、法定協議会を設置してから合併に要する期間の目安を22カ月としている。そのスケジュールの内訳けは、合併協議準備に2カ月、市町村建設計画案策定として6カ月、合併協定項目協議8カ月、合併準備作業に6カ月−−という具合である。
 政府の支援措置を受けることを踏まえて、このスケジュールをこなしていくとすると、柴田・村田・大河原の3町が法定協議会を設置するタイムリミットは来年6月ということになる。住民グループ組織が法定協議会の早期設置を求めているのは、こうした期限制約があることによる。
 では、このタイムリミットをクリアーできるかというと、現状は何とも言えない状況にある。その理由は3町の足並みが揃っていないからである。
柴田・大河原の2町は、町長はじめ町民の多くが合併に賛意を示しているが、村田町ではそこまでに至っていないのだ。
 実際、さる9月2日、大河原町で開かれた「3町合併を考えるシンポジウム」では、平野・柴田町長と佐藤・大河原町長が「財政状況の厳しい中、財政強化などの点から合併のチャンスが到来している」と早期合併で一致した考えを披瀝。これに対し、佐藤洋治・村田町長は「町民全体の(合併に対する)感度は良くない。住民懇談会などの席でも、合併の話はほとんどなかった」と発言。かなりの温度差があることを窺わせた。
 なぜ村田町が「消極的」なのか。関係者はこう解説する。
「要因はいくつかある。第一に町の風土がある。柴田と大河原は他の町から転入してくる人も多く、町が開放的だ。ところが村田は移動性のない町のために、新しいものを受け入れない体質がある。また、村田町は合併してできた町で、そのしこりが未だに残っているとも言われている。
 第二点としては、町長のスタンスの違いだ。柴田と大河原の町長は、先の町長選の際、合併を選挙公約に掲げたが、村田の佐藤町長は公約に謳っていない。それに佐藤町長はまだ1期目ということもあって、行政の舵取りに馴染んでいないし、町民とのふれあいもこれからだ。こうしたこともあって、合併には慎重にならざるを得ないということだろう。要は、町長自身が合併に前向きでないことが大きい」
 事実、村田町では「町民に対する合併の意識調査も充分になされていない」(関係者)と言われており、他の2町と比べて足どりはすこぶる鈍い。
それ以上に、佐藤町長は「合併については柴田・大河原との3町の枠組みでいいのかどうか。他の組み合わせも含めて議論していく必要がある」と洩らしている。このことは言うまでもなく、現在の3町合併構想を「白紙に戻して考える」という意味を含んでいる。このため村田町では「来年6月の法定協議会の設置は無理だろう」という観測が早くも出ている。
 村田町のこうしたスタンスに対して、百人委員会など合併推進派からは「合併に水をさすものであり、村田町の考え方がわからない」と怪訝な声が挙がっている。推進派の一人はこう述べる。
 「3町合併で一番メリットを受けるのは、実は村田町です。例えば町道の舗装率をとっても、柴田は75・6%、大河原が77・2%なのに対し、村田は40・8%。下水道の普及率も柴田が58・5%、大河原は71・2%で、村田は47・8%。これ以外でも3町を比較すると、村田が最も住民サービスが遅れている。合併すれば、まずこうした不公平さを解消することになり、村田町への整備が優先されることになる。それなのになぜ合併に消極的なのか、わかりません」
 さる9月28日、3町は各町の町長と議長による「合併に関する共同研究会」を設置した。これは合併について取り組んでいく前段として、まず合併に関してさまざまな角度から調査・研究していこうというものである。3町内で温度差があることから、この研究会を通して情報収集し、町民に情報提供していく狙いもある。同時に、この研究会では佐藤・村田町長が言うところの「合併の組み合わせ」についても、当然論議されることになる。
 このため「3町が合併できるかどうかは、この研究会の動向に関わってくる」(関係者)とは大方の見方だ。そして「万が一、村田町が乗り気でないなら、法定協議会設置のタイムリミットもあることから、柴田・大河原の2町が合併し、村田町については改めて考えることも辞さない」(関係者)との意見も出てきている。
 さる9月16日、総理府などが主催して「市町村合併をともに考える全国リレーシンポジウム」が開かれた。この中で中川浩明・消防庁長官は3町合併に触れて「合併がうまくいくかどうかは、村田町の動向一つという気がする。町長、町会議員がどこまで本気になれるかだろう」と発言した。
 現状をみれば、まさにその通りなことは否定しようがない。村田町長と村田町住民の「英断」が合併の成否を決めるカギを握っていることは間違いなさそうである。
 
 
 
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