今年12月から宮城県内のNHKと民間放送局が地上デジタル放送を一斉に開始する。
現在行なわれているのはアナログ放送と言われるものだが、ではデジタル放送になるとどうなるのか。そのメリットを各テレビ局は一様に「高画質・高音質による迫力ある映像」「ニュースや気象情報・地域情報などきめ細かなデータ放送ができる」「テレビ局と視聴者との間で双方向の情報のやり取りができる」「携帯型端末を利用した移動体向けの放送も行なえる」などと謳っている。煎じ詰めれば、現在のテレビ(受像機)の迫力さを増し、それにパソコンと携帯電話の機能を加えたものということになろうか。
視聴者の意向を無視したデジタル化
まず視聴者について言えば、アナログ放送専用受像機ではいずれデジタル放送を見ることができなくなる。デジタル放送は開始後、2011年(平成23年)7月まではアナログ放送と並行し(「サイマル放送」という)、その後はデジタル放送のみにすることがすでに決まっている。かつてテレビは一家に1台だったが、今や一人に1台になっており、一軒に2台、3台あるのが普通になっている。これらのアナログ放送専用受像機は7年後には粗大ゴミになってしまうのだ。
テレビ局を苦しめる多大な設備費負担
一方、デジタル放送化はテレビ局にとっても頭が痛い。多大な設備投資を余儀なくされるからだ。現在のアナログ放送からデジタル放送に切り換えるためには、単に電波を送り出す送信機を換えればいいというものではない。送信機のほかに映像と音声を乗せるマスター設備やアンテナ、さらには中継送信局(民放各局は平均して50カ所備えている)
など、一切合切の設備を切り換えなくてはならない。これらの設備投資額は「40 ─50億円にもなる」(県内の民間放送テレビ4局幹部の共通認識)と見込まれている。
このほかにもデジタル放送化のために新社屋を建設・増築したり(宮城テレビ・東北放送・仙台放送)、送信局舎を設置したり(NHK・東北放送・東日本放送が共同で設置)というように、付随設備への投資も避けられない。これら全体の設備投資額を合算すると、60─80億円にも達しそうだ。
各テレビ局が頭を抱えていることはもう一つある。それは今後しばらくは「二重の負担」を強いられることだ。前述したように、テレビ局は今年12月からのデジタル放送開始後も向こう7年間はアナログ放送と並行して両方の電波を流すことが義務づけられている(「サイマル放送」という)。そのため7年間はアナログとデジタルの両方の設備を抱えていかざるを得ない。各テレビ局の幹部が異口同音に洩らすのは「このサイマル放送のランニングコストがどのくらいになるのか予測がつかないことで、実際にやってみないとわからない」ということだ。サイマル放送は言わば「二つの放送局をもつようなもの」(仙台放送幹部)だけに、かなりの負担増になることは避けられない。