2003年
  第12号
農民の預金2億5千万円をドブに捨てた宮城県信連
  赤字企業に3億5千万円融資し、不良債権化で超安値売却
  

  
  
  
  
  
  
  
  
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6千万円で手元に戻ったことに
  
 次に、登記簿上ではウエスト社が長沼ウイングガーデンに債権譲渡したことになっている。だが、実態は違うと思われる。先に触れたように、長沼ウイングガーデンは長沼環境開発同様に経営状態が悪く、ウエスト社から債権譲渡できる資金的な余裕はあるはずがない。長沼ウイングガーデンは名義上だけで、譲渡資金をつごうしたのは抵当権者になっている鞄訣Lであろう。
 鞄訣Lは不動産の売買・賃貸・管理、有価証券の保有売買、経営コンサルティング業、貸金業を営んでいる。会社は当初、東京都渋谷区にあったが、平成元年になぜか迫町に移転している。社長の佐藤俊文氏は佐沼高校出身で、山田社長の2年後輩である。このことからしても、つながりがあると見て差し支えあるまい。

 そして、この一連の債権譲渡を見れば、3億5千万円もの巨額の融資を受けた企業が6千万円の安値で売却され、最終的に債権(経営権)を手にしたのは、長沼環境開発と同族企業の長沼ウイングガーデンである。つまり3億5千万円の借金を背負っていた会社が、「身軽になって」6千万円で元の経営者(山田社長)の手に戻ったということである。どう考えても「最初から筋書きができていた」(地元業者)としか思えないだろう。
 では誰がこのシナリオを書いたのか。宮城県信連ではあるまい。宮城県信連がウエスト社とつき合いがあったとしても、最終的に長沼ウイングガーデンに超安値で譲渡することを自らが計画・実行することは、明らかに背任行為になるからである。

 「最後に誰が利益を得たか」という観点から推測すれば、「恐らく山田社長か、鞄訣Lの佐藤社長、もしくはこの二人と関係の深い人物が仕組んだもの」(地元業者)としか考えられまい。
 問題なのは、宮城県信連が長沼環境開発の債権をウエスト社にいくらで譲渡したのかということである。登記簿には明記されてはいないが、推測できないわけではない。不動産売買に詳しい人物はこう解説する。
 「ウエスト社が鞄訣Lに6千万円で売ったということは、ウエスト社は宮城県信連からそれよりも安く買い叩いたことになる。そうでなければ、鞄訣Lへの売却益が出ない。恐らく3千万円−4千万円で買い取ったのではないか」  この解説と先に示した長沼環境開発の返済状況を考えると、宮城県信連は実に2億5千万円内外の額をドブに捨てたことになる。改めて説明するまでもないことだが、融資した企業が経営破綻した場合、通常、金融機関は担保設定した物件を差し押さえるなどして、融資の損失分を極力少なくするように努める。そのための担保設定・抵当権である。前述したように、宮城県信連は長沼環境開発に融資するに当たって22の物件に担保設定し(その後1件は抹消)、抵当権を有していた。

 ところが、これらの担保物件を差し押さえるどころか、損失回避策を何ら行なわず、いとも簡単に債権譲渡してしまったのである。このため地元の間では「あれだけの担保をしておきながら、一つも差し押さえないということは考えられない。宮城県信連はいい加減な処理をして平気なのか」という批判も出ている。まさに「ドブに捨てた」と言っても過言ではあるまい。
 一連の債権譲渡が終わったのち、山田社長は親しい者に「2億円儲かった」と洩らしたという。
 「儲かった」というのは「払わなくてもいいことになった」という意味なことは言うまでもない。実際、宮城県信連が行なったことは「泥棒に追い銭を与えた」ことに等しいだろう。
 この処理について宮城県信連の融資部に質すと、以下のような答えしか返ってこない。

 −−長沼環境開発のことでお聞きしたい。
 融資部 あの件については債権譲渡して、宮城県信連としては終わっている。
 −−ウエスト社にいくらで売却したのか。
 融資部 守秘義務の手前、お答えできない。
 −−抵当権があったはずだが。
 融資部 守秘義務から、どういう処理をしたかは言えない。

 −−というように、「守秘義務」を盾に一切明らかにしようとはしない。宮城県信連の融資を導いた袋正県議にしても同様である。

 −−長沼環境開発について、宮城県信連が債権譲渡したことを知っているか。
 袋氏 融資を受けたことは知っていたが、その後については何も知らない。
 −−ウエスト社という会社を知っているか。
 袋氏 初めて聞く名前だ。

 −−宮城県信連と袋県議が一連の債権譲渡のシナリオについてどこまで知っているのか、どこまで関わったのか、小紙の微少な取材力・洞察力では明らかにし得ない。しかし、仮りに双方がこの「巧妙な買収劇」に関与していなかったとしても、結果を見れば「悔恨の念」にかられるのではないか。融資に値しない企業を金融機関に紹介し、それを受けて法外な融資を行なわなければ、こうした結末を生じることはなかったと言えるからだ。

 とりわけ宮城県信連の責任は重い。融資部は「宮城県信連としての処理は終わっている」と述べるが、そうではあるまい。処理は終わったかも知れないが、責任は依然として残っているのではないか。第一に、融資対象に値しない企業に巨額の融資をした責任がある。第二に、推測ながらも2億5千万円もの額を返済させる権利を放棄し、破格の安値で売却した責任がある。そして第三には、融資された企業の同族会社が破格の安値で債権(経営権)を手にした「巧妙な買収劇」の真相を解明する責任があると言えるだろう。

 金融機関は不良債権の処理に躍起になっている。そのためにどのような処理をしているかは明らかにされていない。農林中央金庫との完全統合を平成17年までに行なうことが決まっている宮城県信連にあっては、なおのこと迅速な処理が至上命題として課せられている。穿った見方をすれば、迅速な処理のために長沼環境開発のように「ドブに捨てている融資」がないとは言い切れない。農民の預金を無作為に融資し、挙げ句の果てには、いとも簡単に放り投げる−−長沼環境開発の一件が「氷山の一角」だとしたら由々しき問題であり、「農民への背信行為」と言わざるを得ないのではないか。


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